膵臓がんプラザ
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膵臓がんの予後は極めて不良

わが国の膵臓がんの年間死亡数がついに3万人を超え、悪性腫瘍による死亡順位も、肺がん、結腸がん、胃がんに次いで第4位となりました(2016年 国立がん研究センターがん対策情報センター)。さらに、がんと診断されてからの相対生存率(治療でどれくらいの生命を救えるかを示す指標:平たく言えば、治療がどれだけ有効かを示す指標)が、他の癌と比較して、極めて不良であることが明らかとなっています。肺がん、結腸がん、胃がんの5年相対生存率は、それぞれ約40%, 約70%, 約60%と言われていますが、膵がんは7-8%程度と、10%にも満たないのが現状です。つまり、膵臓がんと診断されて治療を行っても、5年後に生存している人が10%にも満たないというのが現状です。一方、前立腺がんや乳がんの5年相対生存率は、それぞれ98%と91%で、治療を行うことによって9割以上の方が5年以上の生存が期待できます。同じ「がん」でも、5年間で命を落とす人が10%未満の「がん」もあれば、5年間生存する人が10%にも満たない「がん」もあるわけです。現代の医療技術を駆使してもなかなか治療に難渋するがんの代表が膵がんで、残念なことに男女とも膵がんの死亡者数は年々増加しているのが現状です。我々は、この現状を打破するため、世界初の試みであるMRIガイド下の高精度放射線治療システム「メリディアン(ビューレイ社)」を導入し、膵がんをターゲットとした治療を開始しました。すでに、米国では2012年、FDA(日本の薬事承認に相当する)により認可されており、UCLAなど米国の有名大学病院やがん専門病院を中心に導入され、急速に普及している新型の放射線治療技術です。我々は、日本で2施設目となる「メリディアン」を2018年5月に導入し(本邦での1号機は国立がん研究センターに導入済み)、膵がんに対するメリディアンによる高精度放射線治療を開始しました(本邦でも薬事承認済)。

 

一般的な治療方針

膵臓はどこにあるのか? 膵臓がんは膵臓にできる悪性腫瘍ですが、その部位は、体の外から同定することはできません。膵臓は胃の後ろにあり、周りに十二指腸や小腸、大腸など腸が埋め尽くしています。また左右には腎臓があり、膵臓の後ろには脊髄神経が上から下まで走行しています。


【図1 膵臓部分の断面図】
膵臓の部分を輪切りにして、下から見た図

 
 
 
 

【図2 膵臓を正面からみた図】
 
 
 
 

膵臓は生命を維持していく上で中心的な役割を担っています。その膵臓に癌ができると、膵臓の機能に障害がでるだけではなく、肝臓や胃腸、内分泌系にも影響を及ぼし、全身障害へと急速に進行する傾向があります。また、膵臓がんは体の奥深くに発生する腫瘍であるため、早期発見が難しいのが現状です。さらに、膵がんはリンパ節転移、肝転移、腹膜播種を高率に合併するため、膵臓がんが見つかった時、すでに手遅れと診断されることも少なくないのです。

 

膵臓の役割

膵臓は主に、二つの系統での役割があります。一つは、消化や吸収にかかわる外分泌機能と呼ばれるものと、血糖の調整など内分泌機能と言われる二つの機能に大別されます。膵がんに罹患すると、この両方の機能に障害をきたし、消化不良を起こしたり、血糖コントロールが不良になり糖尿病が悪化したり、さまざまな全身症状をきたすことがあります。しかし、膵臓がんによる影響はそれだけではなく、周囲の臓器を虫食むことによる様々な合併症が起きます。例えば、消化管に膵臓がんが浸潤すると、腸閉そくや胃腸穿孔(胃や腸にあながあく)、消化管出血を起こします。膵臓の中を走行する総胆管に癌が浸潤すると、胆管が詰まり、閉塞性黄疸という合併症を生じます。また、膵臓の近くに神経の中継地点があり、腹部の神経が集中している部分がありますが、その部分に癌が浸潤すると、それまで経験したことのないような強い痛みを感じます。また、膵臓のまわりには、数多くの太い血管が通っており、血管が閉塞するとその血管が栄養している臓器の障害(肝不全や腸管虚血など)を生じます。一方、血管が損傷され破裂すると、大出血を起こし、場合によっては命取りになることもあります。また、膵臓がんは腹部全体に種をまくように飛び散る性質をもっており(播種という)、腹水や腸閉塞、腸穿孔の原因になります。このように膵がんは、多種多様な症状を呈し、根治的な治療だけではなく緩和的な治療においても高度な判断が必要になります。