膵臓がんプラザ
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膵臓がんに対する般的な治療方針をお示しします。
膵臓がんは治療法の選択から、4つの病態に分類できます。
 

①切除可能な膵臓がん(R)
外科的療法(手術で切除する)が考慮されます。
手術の後に、補助療法を行う場合があります。特に、手術により膵がんが完全に取り切れていなかった場合は、放射線と抗がん剤を併用した化学放射線療法が考慮されます。

②切除可能限界の膵臓がん(BR)
補助療法の後、切除可能となった場合は、外科的治療が行われることがありますが、化学放射線療法が選択される場合もあります。
術前に化学放射線療法を行い、その生存期間が有意に延長したという報告があります。すなわち、手術の前に化学放射線療法(抗がん剤+放射線)を行うことにより、治療成績の向上が示唆されています。化学放射線療法を行うことにより、手術の後の重篤な合併症や手術による術死の頻度は、化学放射線療法を行わない場合と比較し、変わらないとの結果も得られています。術前化学放射線療法を行った後、完全に切除できた症例は、長期生存が期待されるとの結果も得られています。

③切除不能な膵臓がん(局所進行膵がんのうち、遠隔転移なし)(UR-LA)
化学放射線療法あるいは化学療法のみが行われます。
遠隔転移のない局所進行膵臓がんでは、放射線療法単独より化学療法を併用した化学放射線療法の方が、予後が改善することが示されています。しかし、化学療法を併用すると、化学療法による副作用に加え、放射線による副作用も上乗せされるので、慎重な判断が必要になります。

④切除不能な膵がん(遠隔転移あり)(UR-M)
化学療法を中心とした治療が考慮されます。腫瘍による症状がある場合や大切な臓器への障害が懸念される場合は、緩和的、姑息的な放射線療法を行う場合があります。

上記の①~④のうち、すべての病状で放射線治療が行われる可能性があります。すなわち、膵臓がんと診断された時から、放射線治療に関する正しい知識を持つことは重要と言えます。また、放射線治療は、原則として同じ部分には再び照射はできません。例えば、膵臓がんと診断されて放射線治療を行い、同じ部分に再発した場合、たとえ初回の放射線治療から何年も時間が経っていても、同じ部位に同様の放射線治療はできないということです。それは、膵臓がん周辺の正常組織が、放射線によって障害を受け、その障害が蓄積されるからです。放射線は切り札である一方、一枚しかない切り札であるとも言えます。

それではどうしたらいいのでしょうか?
可能な限り、正常組織に対しては放射線を当てずに、がんの部分にはたくさん放射線を当てて、がん細胞を最大限に駆除する工夫が必要です(図1)。


【図1 膵臓および周辺臓器】
膵臓は胃、十二指腸、小腸、大腸、腎臓、脊髄神経など、重要臓器に囲まれている。

 
 

従来の放射線治療では、複雑に入り組んだ正常組織を分離して治療することができませんでした。正常組織も含めて、全体にまんべんなく放射線を照射する方法が長らく行われてきました(図3)。

【図3 従来の照射方法】
胃や十二指腸、脊髄神経など正常組織にも等しく放射線が照射されていた。

 
 

しかし、近年の医療技術の進歩により、様々な形状の放射線治療が可能となり、オーダーメイドで照射野を設定することができるようになりました。その新技術のことを、強度変調放射線治療(IMRT)と言います。IMRTにより、これまで治療できないとされてきた多くがんで根治的な放射線治療が可能となり、副作用の低減、治療成績の向上が示されました。この高精度放射線治療であるIMRTを行うための専用機がトモセラピー(図4)で、標準的治療の一つとして、重要な役割を果たす時代になっています(図5)。


【図4 トモセラピー】
CTスキャンとIMRTの二つの機能をもつ高精度放射線治療機

 
 


【図5 トモセラピーによる照射野】
CTスキャンとIMRTの二つの機能をもつ高精度放射線治療機

 
 

オーダーメイドで個々の症例に合わせた照射野(黄色の部分)を作成。腫瘍の部分にたくさん照射し、胃や十二指腸への被ばくは極力避けることが可能になった。

当院ではトモセラピーを3台導入し、IMRTに特化した放射線治療を行ってきました(注:トモセラピーを3台導入している施設は本邦では江戸川病院のみ)。膵臓がんに対しても、積極的に治療を行ってきました。トモセラピーは治療で用いる放射線の発生源を微弱な放射線に切り替えることが可能であり、その微弱な放射線を用いてCTが撮影できます。治療直前の状態での腫瘍の位置、腫瘍周囲の正常組織の状態を照射前にあらかじめ確認し、照射野を適切な位置に微調整した後、実際の照射が行われます。膵がんのように、体の外から見ることのできない臓器では、この画像誘導下でのIMRTが大きな威力を発揮します。腫瘍にはたっぷり照射しつつも、腸管などの重要臓器への被ばくを大きく軽減することができます。

しかし、この画像誘導下での放射線治療にも欠点があります。照射中に腫瘍や正常組織が動いた場合、その動きをリアルタイムにとらえることができません。例えば、腸管が動いた場合、体の外からその動きを断層画像でとらえることはできません(図6)。この欠点を克服するため、MRI監視下のIMRT治療システム、メリディアンが開発されました(図7)。


【図6】
照射中、体の中の臓器は無意識のうちに動いてしまう。
照射中、胃や腸が無意識のうちに動くことにより、照射野(黄色の部分)の中に正常組織が入り込んでしまうことがある。

 
 


【図7 メリディアン(MRIdian)】
MRI画像を取りながら放射線治療が可能。MRIと放射線治療を融合した治療システムは、世界初。

 
 

メリディアンでは、予期しない腸の動きを瞬時に画像化できるため、照射野に腸などの正常組織が入り込んできたら、遅滞なく瞬時に放射線のビームを止めることができる。このメリディアン治療システムを用いると、正常組織と腫瘍の両者を同時に「観ながら」治療ができます。米国、ヨーロッパではすでに通常診療で寡動しており、本邦では2016年に薬事承認を得ました。